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FPサポートリンク Q&A

2016年03月22日

マイナス金利下の住宅ローン金利

回答者 中村 伸一 (東京都)

2016年1月20日、前回のコラムで金利の大切さについて記しましたが、そのあと、日銀がマイナス金利を導入したのは、私にとってはBig Surprise でした。
 
原油安と中国経済の変調、ドイツ銀行の不調に代表するEU経済の停滞など、年初から株価が大きく下げ続けたことに対する処方箋が、マイナス金利の導入でした。
 
日本で歴史上初の事態ですので、マーケットがどう反応したら良いのか、ある意味手探り状態になっています。
 
効果がある面と、副作用ともいえる面が出たりと、いまだマイナス金利の功罪の評価は定まっていません。
 
では市中銀行の貸出に対して、マイナス金利はどのような影響を及ぼしているでしょうか?その実態をみると、恩恵を受けるのが大企業など一部にとどまる構図が強まっているようです。その理由は政策導入後1カ月以上たっても、主要銀行は貸出金利の基準の一つである短期プライムレート(短プラ)を引き下げていないためだからです。中小企業への貸出金利は短プラ連動で決定されるので、金利低下の恩恵が届きにくい状況です。おおよそ住宅ローン残高の6割を占める変動型ローン金利も短プラを指標に決めるため、ほとんど下がっていない状態です。
 
その他の無担保コール翌日物、長期金利、TIBOR3カ月物、長期プライムレートは、軒並み下がっていますが、唯一短期プライムレートだけが下がっていません。
 
私たちに身近なところで、住宅ローン金利について見てみましょう。
 
「金利面で政策効果が表れている」。日銀の黒田東彦総裁は3月15日の記者会見でこう強調しました。確かにマイナス金利決定後に東京銀行間取引金利(TIBOR)3カ月物は約0.07%下がりました。その結果住宅ローン金利も固定型を中心に低下しました。

ただ前に述べたとおり、各行は短プラを下げていません。今は年1.475%が多く、2009年1月から据え置かれ、01~06年につけた過去最低の1.375%を上回ったままなのです。その背景は預金金利の下げ幅が限られるなかで短プラを下げると利ざやが縮み、銀行の収益が減るという事情があるからです。
 
 プライムレートとは銀行が財務内容や業績がいい優良企業にお金を貸す際に適用する最優遇貸出金利を指します。短プラは1年未満の短期貸し出しの基準金利でしたが、長プラ(年0.95%)を上回る逆転状態が続き、「形骸化している」(銀行関係者)との見方もあります。しかし、中小企業や個人向け貸出金利の基準として使われているため、借り手には無視できない影響が大いにあるのです。
 
 短プラが下がらないと個人にも金利低下の恩恵が届きにくくなります。住宅ローンの変動金利のほか、教育ローンや自動車ローンなどの金利も短プラ連動が多いためだからです。
 
 とある住宅ローンの比較サイトが主要81行の3月適用の平均金利を調べたところ、10年固定型は前月比0.1%下がったのに対して、変動型の下げ幅は0.007%にとどまりました。ただ、4月からソニー銀行の住宅ローン変動型金利が、0.5%を切り、0.499%に切り下られます。
 
 多くの銀行は住宅ローン金利を「基準金利」と「優遇幅」の2つで決めます。3メガバンクなどは競争激化から優遇幅を広げるかたちで金利を下げていますが、短プラに連動する「基準金利」は変えていません。「優遇幅」のみ下げていますので、新規借り入れの金利は下がりますが、既存の借り手の金利は下がっていないのが現状なのです。
株式会社マネーデザイン
代表取締役 中村 伸一